最高裁判所第三小法廷 昭和23年(オ)144号 判決 1949年5月17日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
本件上告理由は末尾添付の別紙記載のとおりであつて、これに対する判断は次のとおりである。
地方自治法第六六条第一項の規定による都道府県の選挙管理委員会の決定又は同条第二項の規定による裁決に不服があつて、同条第四項の規定により高等裁判所に出訴することができる者は、選挙又は当選の効力に関して異議がある選挙人又は候補者に限られ、上告人のように市町村議会議員の選挙に関して申立てられた異議について決定をした市町村の選挙管理委員会を含まないことは、同条の規定の文理解釈上明かであるばかりでなく、争訟の法理から見ても疑ないものといわねばならない。けだし、争訟の審判に関する審級制においては、下級審は同一事件に関する上級審の判断に羈束せらるべきものであるから、争訟を第一次的に審判した下級審が第二次的に審判した上級審の判断を不当として、更に上級の裁判所に出訴するというがごときことは、争訟制度の機構に反するからである。上告人は、仮りに上告人自身は本訴に関し高等裁判所に出訴するについて当事者たる適格を欠くとしても、本件選挙の候補者であつた石黒栄太郎および小林栄治の両名が上告人の出訴に補助参加をしているから適法であると主張しているが、補助参加人は主たる当事者である被参加人を勝訴させるために、これに附随してその訴訟を追行するに止まるのであつて、真実の訴訟当事者となるのではないから被参加人が訴訟の当事者たる適格を欠き勝訴判決を得ることができない以上、補助参加人が本件選挙の候補者であつたからといつて、被参加人に欠けている本訴の当事者たる適格を補うものということはできない。されば、論旨はいずれも理由がない。
よつて、上告は理由がないので、行政事件訴訟特例法第一条民事訴訟法第四〇一条第九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。
以上は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)